ファンドレイザーのお仕事

ファンドレイジングについての知識と感情とあれこれ。

スタディ・ツアーに対する私見

ご無沙汰しています。

 

以前に書いたかもしれませんが、私は毎年フィリピンのセブ島を訪れています。今年も6月に2週間ほど滞在する予定です。

 

今回の滞在では、子どもの貧困界隈から離れ、あまり日本では知られていない現地の人による地域密着の社会貢献活動について調査してきたいと考えています。

 

自分でも探していますが、去年セブで知り合った語学学校の先生がお友達(役所勤め)に、団体を紹介してもらえるよう頼んでくれているので、6月までに訪問先を見つけたいです。

 

非営利団体といっても活動内容はさまざまですが、セブ島で活動している日系のNPO/NGOは、そのほとんどが「子どもの貧困」または「子どもの就学支援」に取り組んでいるように思います。もちろん、そこから派生して親の自立支援(就労支援)や人権問題に活動を広げている団体もありますが、基本は貧困問題。そして、その多くの団体で行われているのが「有料のスタディ・ツアー」です。

 

私は個人的にこのスタディ・ツアーに対して良い印象を持っていません。

 

非営利団体が自分たちの活動を広報したり支援者を募ることはとても重要な仕事の一つなのは当然ですが、このスタディ・ツアーに関してはいくつか課題があると思っています。今回は私が考えるスタディ・ツアーの問題点について書かせていただきます。

スタディ・ツアーの問題点1

1つ目は「子どもに負担を強いる」可能性がある点。日本から支援者(潜在的支援者を含む)が訪問してくるとなれば、彼らはゲストに気に入られようとかゲストを喜ばせようとしてダンスやゲームをしたり、歌を歌ったりします。スラム訪問ツアーでは、初対面の外国人がぞろぞろと子どもたちの生活圏を訪れることになります。ツアー参加者にとっては、スラムの街を歩いたり家を見せてもらったり、子どもたちと遊んだり食事を配ったりと興味深い体験ができるかもしれませんが、子どもたちにとっては自分たちが貧しく、支援される側であることを突きつけられる経験になっているのではないでしょうか。

スタディ・ツアーの問題点2

2つ目はスタディ・ツアーが参加者のレジャーとして消費されている側面があるからです。スタディ・ツアーでスラムの子どもたちと一緒に遊ぶ、一緒に写真を撮る、そのこと自体がSNSのネタになったり、就活の面接で披露する社会貢献体験として消費されていて、NPONGOが行っている活動への共感や地域社会や子どもたちが抱える課題に対する理解に結びつけられていない場合が多いように思います。募集要項の中に「就活に役立つ」などとあからさまに記載しているツアーもあります。

スタディ・ツアーの問題点3

3つ目はスタディ・ツアーによってNPO/NGOの活動が不安定になることです。スタディ・ツアーの参加者は日本人なので、当然ツアーは日本の大型連休に集中します。団体にとっては大きな事業収入の機会となるため、普段行っている支援活動の人員をスタディ・ツアーのアテンドに回したり、窓口となっている旅行代理店との交渉や報告書の作成に充てることになります。日本の連休や旅行代理店の都合で団体のリソースが奪われてしまい、安定した事業活動の妨げになっている場合があります。「旅行代理店の下請けになれば儲かるけど、そんな事はやりたくない」とおっしゃっていた団体の方がいました。

 

まとめ

スタディ・ツアーという名前以外にも「ボランティア体験」や「インターンシップ」といった名前で、子どもたちとの関わりを事業収入の柱にしている団体はあります。しかし信頼関係が構築できていない異国の大人と接触する子どもたちのストレスに対して、私たちはもう少し配慮すべきではないでしょうか。子どもたちは見せ物ではありませんし、先進国の若者の自分探しの道具でもありません。そして団体側は、自分たちの活動に誇りを持ち、子どもたちの明るさや笑顔を利用しないファンドレイジングを模索して欲しいし、私自身もそれができるファンドレイザーになりたいと思います。

 

 

<お断り>

 

私はすべての団体について詳しく知っている訳ではありませんので、スタディ・ツアーを開催しているすべての団体が配慮に欠けていると言っている訳ではありません。私自身もセブ島貧困層の男の子の就学支援(里親)を7年前からしており、この制度の良さと危険性のバランスに葛藤しています。あくまで私がセブ島で見聞きしたこととスタディ・ツアーに参加した方の感想、そしてセブでお話を聞かせていただいたNGO/NPOの職員の方のお話を踏まえた私見です。

 

 

余談

実はセブにも(日系ではありませんが)「子どもたちの心の安定と職員との信頼関係が一番重要」とのポリシーから、ボランティア体験やスタディ・ツアー、見学などを受け付けず、あくまで金銭的な支援だけを募って活動している団体があります。ドナーをお客さん扱いしない点が潔く、宣言を読んでめちゃめちゃ感動しました。視察などは受け付けていないので、FBページやメールマガジンを通して勉強させてもらってます。