ファンドレイザーのお仕事

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【報道発表】フィリピンに対する無償資金協力に関する書簡の交換 より

www.mofa.go.jp

魚を与えるより魚の釣り方を教える方がいい、なんていう話は国際協力でよく聞く。

今回のフィリピン・ミンダナオに対する日本の無償資金協力は、その魚の釣り方を教えるための資金提供だ。

 

支援の内訳は、農業分野の機材(灌漑用ポンプ,ハンドトラクター,精米機等)の整備や元兵士等約2,000人に対する職業訓練に2億円、上水分野の機材整備及び水道分野の職業訓練に3億円の計5億円。

 

ロジックモデルにすると、インプットは資金提供(5億円)。活動は機材の整備と職業訓練の実施。アウトプットは職業訓練の実施回数や受講者数。初期アウトカムは数万人が安全な水や食料を入手できるようになること。中期アウトカムは地域に雇用が生まれ経済が活性化すること。長期のアウトカムは地域の安定(犯罪や病気の減少など)となる。

 

アウトプットだけを見れば、「数千人に職業訓練するだけで5億円は高すぎないか?」なんて思う人もいるかもしれないけれど、その訓練の実施によって数万人の人が安全な水や食料を安定して得ることができるのであれば妥当だと思うかもしれない。そして長い目で見れば、雇用や経済活動が活性化し、地域の安全や健康に繋がる可能性だってある。そうなれば最初の5億円は、単に水や食料を配るより何百倍の効果を生むことになる。

 

ただし、これを絵に描いた餅にしないためには、正しい評価(指標の設定・データの収集・分析・報告と改善)が必要で、それができる人や組織を育てるのは、職業訓練よりも難しいはず。現地の人が自分たちで評価・改善していけるようになるためには、ムラノミライさんが提唱してるメタファシリテーションが大切なんだろうな。記事には載っていなかったので、今後どう事業の評価をする計画なのか興味がある。

 

余談ですが、貧困問題に取り組む某国際協力NPOのブログで、喉が渇いて雨水を集めてるストリートチルドレンの少女に対して「彼女に水を与えるのは簡単だけど、それは彼女のためにならない。彼女に本当に必要なのは教育だ」という主旨の記事を読んで、「確かに教育は必要かもしれないけど、まずは水あげればいいのに」と思ったことがありました。ロジックモデルやインパクト評価が課題を解決するために必要な視点だと理解した上で、NPOがアウトカムや社会的インパクトに偏重し「目の前の人が今困ってること」を軽視するようになりつつあるのだとしたら、それは怖いことだなと思いました。